本とその周辺をめぐる、6か月とちょっとの旅
小説家・福永信さんとともに、執筆から編集、出版、販売までを体験するワークショップ「本とその周辺をめぐる、6か月とちょっとの旅」を開催しました。
私たちは普段、本を完成した状態で手に取ります。しかし、その手前には書く人、編集する人、デザインする人、売る人、読む人といった多くの関係があります。このプロジェクトでは、ただ小説を書くことを目的にするのではなく、書くことを通して「文章を書くとは何か」「読むとは何か」「本をつくるとは何か」を参加者とともに考えることを目指しました。
初回講座では、その場で執筆された文章を即座に組版・印刷し、参加者へ配布。自分の言葉が、画面上のデータから離れ、本の中の言葉として立ち上がる体験からワークショップは始まります。その後、約半年にわたる執筆と対話を経て作品を育て、最終的には10編の短編を収録した書籍として刊行しました。制作の過程では、文章だけでなく、編集、装丁、価格設定、流通までを共有し、本が読者へ届くまでのプロセス全体を参加者とともに経験しました。
刊行後には、本の原点となった200字小説を展示として空間上に再構成しました。ワークショップ第1回で書かれた「本屋」をテーマとした掌編を、壁面全体を使ったインスタレーションとして展開。本の中に綴じられた言葉を再び空間へひらき、来場者が本屋という場所で読む体験へと翻訳しました。
完成した書籍だけでなく、言葉が生まれ、本になり、読まれ、再び空間へ現れるまで。その一連の循環そのものが、このプロジェクトの試みでした。



